その72 魂(spirituality)を磨いて健やかに
NHKの連続テレビ小説「あんぱん」が先週から始まりました。アンパンマン作者のやなせたかしをモデルとしたドラマです。

子供時代のたかしのが幼馴染のぶちゃん(後の妻)の父親が出張先で亡くなり、悲しみに暮れています。たかしは居候している叔父(医師)に問いかけます。(たかし)どうしたらのぶちゃんに元気になってもらえるのかな。僕にできることはないのかな。

(伯父、竹野内豊)そればっかりは、医者にも治せん。時と言う薬しかない。それが生きちゅうことではないかい。生きちゅうき、悲しいがや。生きちゅうき、苦しいがや。生きちゅうき、いつか元気になって、きっと笑える日が来るがや(僕らはみんな生きている、詩 やなせたかし)。



たかしは、駅で父親を探すのぶちゃんに、駅に迎えにきたのぶちゃんと父親の絵を渡します。のぶちゃんは絵を抱きしめます。

人間の苦痛(total pain)は、①身体的苦痛(physical pain)、②精神的苦痛(mental pain )、③社会的苦痛(social pain)、④霊的苦痛(spiritual pain)に分類されます。①と②は鎮痛薬や抗不安薬などで対処か可能ですが、③に関しては環境調整が必要であり、④に関してはスピリチュアルケアが必要です。



魂(spirituality)」は、自然界に親しみ、感じ、そこにある人智を超えた力に畏敬の念を持つことで育まれます。スピリチュアルケアでは「すべての病は魂のエネルギーが抑圧された結果である」と考え、魂のエネルギーを高めることを目的とします。WHO の定義によれば「スピリチュアリティは宗教と同義ではない。それは、人生に意味を見出すことや、他者・宇宙とのつながりを見つけることに関係している」とされています。

では、魂のエネルギー(spiritual well-being )を高めるにはどうしたらいいでしょうか。

27歳で京セラを創業し、78歳で日本航空再建に取り組んだ稲盛和夫氏(1932-2022)の行動義をご紹介したいと思います。

1 誰にも負けない努力をする
2 謙虚にして驕らず
3 反省のある毎日を送る
4 生きていることに感謝する→自然の摂理によって生かされている
5 善行、利他行を積む→陰徳を重ねる。思いやりの心を持つ
6 感性的な悩みをしない→くよくよ悩まず新しい行動に移る


2009年10月15日に行われた鹿児島大学工学部稲盛学生賞・授賞式での特別講義 「活きる力」より稲盛和夫氏は「人生と経営」の中で「経営には権謀術数(戦略・戦術)は全く必要ない、今日一日を一生懸命に生きさえすれば、未来は開けてくる」と述べています。「一生懸命苦労して努力してきた結果、魂が磨かれて人間性が向上していきます」と続きます。

「一生懸命に『誰にも負けない努力をする』と同時に『反省する』ということを毎日繰り返していけば、魂は純化され、浄化され、美しい魂へ、また善き魂へ変わっていくと私は信じています」と締めくくっています。

魂のエネルギーが高い人は、うつ病や不安が少ない、人生に満足している、人に優しくでる、病気の回復が早くなる ということがわかっています。

現代社会は「心の時代(Mind from Matter)」と言われています。心とは単なる精神を意味するだけでなく生命の根本にある魂と考えて、それを高める視点が大切になります。

アンパンマンは、お腹をすかせた人に自分の顔の一部をちぎって与える、究極の利他精神を持ったヒーロです。この素晴らしい絵本を読んで育った40代以下の人々が、これからの日本を支えてくれると思うと心がほっこりします。

以上です。

参考文献

『生き方―人間として一番大切なこと』(稲盛和夫、サンマーク出版 2004)
 Handbook of Religion and Health 2012
2025.04.16 10:19 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ

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