その29  新型コロナにかかったらどうする?どうなる?
朝夕涼しい風が吹き、秋の気配が感じられるようになってきました。

新型コロナはデルタ株による第5波が猛威を振るい、ワイドショーでは自宅療養者の症状が急に悪化しても、入院できないという差し迫った映像を流しています。中には乳児が新型コロナに感染し、人工呼吸を受けているシーンも放映されています。

そろそろ皆さんの周りにも、新型コロナに感染した人が散見されるのではないでしょうか。明日は我が身かもしれません。或いは家族がかかるかもしれません。

今日のテーマは「新型コロナにかかったらどうする?どうなる?」です。

もし家族が感染したら、自身は濃厚接触者です。家族が治癒(発症後10日間)してから、更に14日間の経過観察が必要です。家族が治るまで10日間、それから更に14日間、計24日の自宅待機が保健所から指示されるそうです。これは今でも厚労省のサイト*1に示されていますが、その根拠は昨年2月の日本環境感染学会の提言*2です。

しかし、これではエッセンシャルワーカーの仕事が成り立ちませんので、今年の8月になって「医療従事者に限っては濃厚接触者でもすぐに勤務できる」という文書が厚労省から示されました。

濃厚接触者の定義は、①患者と同居、車内や飛行機で長時間接触、②マスクなしで患者と15分以上1?2mで接触があった場合、などですが、保健所が総合的に判断して決定します*3。

もし職場で新型コロナ感染者が出たらどうなるでしょう。最近はリモートワーク中心になっていますので、そのような場合は問題ないと思います。もしオフィス出勤者が発症するとどうでしょうか。1年ぐらい前は、当ビルのオフィスでも感染者が出て、保健所の指示で濃厚接触者のPCR検査が行われました。

最近では、「初動対応における接触者」への検査*4が重要視されています。すなわち社内で感染者が発生した時、保健所の指示を待たずに、患者との接触が考えられる者に、抗原検査やPCR検査を積極的に行うことが求められています。

もし自分自身がコロナにかかったらどうなるのでしょう。病院でコロナと診断されると24?48時間以内に居住地の保健所から電話連絡があります。感染経路などについての質問の後、健康観察が行われ、軽症(酸素飽和度96%以上または基礎疾患のない人)であれば、宿泊療養を勧められます。ホテル宿泊を希望しない人は自宅療養になります。中等症(酸素飽和度95%以下で基礎疾患のある人)は、入院の指示があります。

現在、都内のコロナ病床6000床のうち4200床が入院中で、入院基準が厳しくなっています。軽症者は原則ホテルでの健康観察を勧められますが、9月1日時点でのホテル療養者は2180人(3370受入可能)、自宅療養は約20000人で、ほどんどの人が自宅療養を希望しています。入院調整中は6800人です*5。狭い部屋に閉じ込められて、好きなものを食べられない環境は、適切な療養環境とはいえませんから当然の結果だと思います。

自宅療養中は毎日一度保健所から健康観察の電話が入ります。パルスオキシメーターの貸与と1週間分の食料(カップ麺、レトルト食品)が届きます(発症から4?5日かかる)。一人暮らしの人は、デリバリーで食料を買うか、近所で必要最低限の買い物をします。発症後10日かつ解熱後72時間経過した時点で治癒と判断され、療養は終了です。

新型コロナ感染症の特徴として、息苦しさを感じる脳の部分が麻痺していることがあり、急激な呼吸不全をきたしても患者本人が気づかないことがあります。8月13日になって厚労省は医療機関に対して、「PCR検査を行った医療機関が積極的に健康観察を行うようこと」という通達を出しました。

新型コロナウイルスの病期は以下のとおりです。

①ウイルス感染期→症状は熱、頭痛、咽頭痛、咳などで1週間前後で改善。8?9割の人はここで治ります。治療は解熱剤、漢方薬(麻黄湯、葛根湯)、ハイリスク患者には抗ウイルス薬(レムデシビル、抗体カクテル)を点滴します(総合病院の外来に限る)。

②免疫介在性炎症期→発症7?10日後より呼吸困難が急速に進行し、入院が必要です。治療は酸素療法に加えて、ステロイド、抗炎症薬(バリシチニブ)の点滴を行います。

③後遺症期→慢性的な倦怠感、疼痛、嗅覚・味覚異常が数ヶ月以上続くことがあります。治療は確立したものはありませんが、漢方薬(補中益気湯、八味丸など)、抗うつ薬などが使用されます。

ここからは私見です。

政府や分科会は、今だにPCR検査や抗原検査を積極的に行うようにと発信しています。しかし、新型コロナもここまで流行してくると全数把握の意味は薄れていると思います。インフルエンザと異なり診断がついても治療薬はなく、特に11歳以下の小児・乳幼児はワクチンすら打てないので、完全な制圧を目指すことに無理があります。

若くて元気な人が発熱や濃厚接触したときに、すぐにPCR検査を受ける必要はないと思います。診断がついても治療法はありませんし、若者はすぐに治ります。保健所業務も手一杯です。濃厚接触者であってもPCRは行わず、感染対策をしっかりして行動を最小限にすればいいのではないでしょうか。もちろん基礎疾患のある人や高齢者はこの限りではありません。

今度はμ株なんぞが話題になっていますが、そろそろ個々人が冷静な行動をとる時期だと思います。 以上です。

*1 厚生労働省サイト 
*2 令和2年2月28日 日本環境感染学会提言 
*3 令和3年8月17日  東京都福祉保健局感染症対策部長
*4 令和3年6月 25 日  厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部
*5 新型コロナウイルス感染症の療養者の状況(厚労省サイト)
2021.09.03 19:41 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ

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