その37 五月病 Spring Fever
季節による気分の落ち込みは秋から冬に向けて起こりやすく、寒さや日照時間の減少が原因であることはよく知られています(冬季うつ病)。それとは反対に春から夏にかけて気分が落ち着かなくなったり、やる気がなくなるのが、いわゆる五月病(spring fever)です。 spring feverをオックスフォード新英英辞典で調べると「と定義されています。

警察庁の自殺統計に基づく厚労省の分析では、毎年(令和2年を除く)4-6月に自殺者がピークになっています*1。米国や英国においても4-5月が一番多いことがわかっています。個人的な理解としては「入社後または部署異動後の緊張感が、春の大型連休によって緩んでしまうことが原因では」と考えていましたが、春特有のストレス要因がありそうです。

春に見られる変化は大きく3つあります。1)日照時間増加、気温の上昇、変わりやすい天気 2)新たなスタート、お祭り気分、大型連休 3)生命の息吹です。これらは一般にはワクワクするような前向きの季節と捉えられますが、心身の疲労がある人にとっては受け止め方が変わってきます。

1)春の日照時間の増加によって、脳内の意欲に関連する神経伝達物質(特にセロトニン)が増加し、意欲が出る場合もあれば自律神経を過度に興奮させ、落ち着きがなくなることがあります。また日が長くなることで、睡眠時間が短くなり体の疲れが溜まります。英語では五月病をspring fatigueと表現することもあります。

2)新たなスタートやお祭り気分の緊張感や気分の高揚が、心身の疲労を招きます。

3)哺乳類は春になると活動的、性的ホルモンが高まるように生物時計が仕組まれています。

このように春は心身の疲労をきたしたり、気分を不安定にする要素があるのです。

5月病になりやすい人*2

性差 女性がなりやすく、症状は男性の方が重症化すると報告されています。

年齢 男女ともに20代、40代女性、50代男性

その他、うつ病の既往歴、家族歴、生活環境の変化、飲酒歴、花粉症、真面目で内向的な性格の人、死別経験、結婚、仕事の部署異動

五月病を予防するために(疲れにくい体づくり)*2

睡眠 : 遮光カーテン、部屋の風通し、涼しい寝具、バックグラウンドサウンド

運動 : 体が熱をもたない水泳、涼しい室内でのストレッチ

食事 : 食事量を7?8割に抑える、アルコールを控える

日課 : 毎日コツコツ続ける(例:読書、習い事、資格などの勉強、ストレッチ)

体験 : 瞑想、旅行、美術館、映画、コンサートなど

交流 : 気のおけない仲間や信頼する人と話すこと

霊的活動 : お墓参り、神社仏閣参りなど

考え方:まあいいか、とりあえずやろう

漢方 : 八味丸、六君子湯、芍薬甘草湯

言いたいこと:五月病は環境の変化だけでなく、生物学的な原因が関与しているため、環境調整だけでは解決しないことがあります。症状を治すためには、環境調整と同時に体調管理が重要です。不眠や倦怠感が続く方は、放っておかず産業医にご相談ください。

以上です。

参考文献:

*1 厚労省(令和4年4月8日発表)https://www.mhlw.go.jp/content/202112-sokuhou2.pdf
*2 The Emotional Calendar: Understanding Seasonal Influences and Milestones to Become Happier, More Fulfilled, and in Control of Your Life by John R Sharp 2011
2022.05.09 19:47 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ

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