コロナとインフル同時流行
10月に呼吸器学会、感染症学会、環境感染学会から共同で、今シーズンの感染症対応フローチャートが発表されました。発熱した場合、高齢者やハイリスク者を除き、直接医療機関を受診するのではなく、まず市販のコロナ抗原検査を行い、陰性であった場合のみ発熱外来を受診するよう示されています。



驚くことに、「インフルエンザの蓋然性が高いと考えられる場合、電話・オンライン診療であっても、インフルエンザの検査をせずに、医師の臨床診断により抗インフルエンザ薬等を処方することができます」などと追記があります。

厚労省のチラシには「コロナ抗原キットば信頼のおけるものを選びましょう」などと言う文言まであります。


日常診療で感じることは、自己抗原検査の感度(病気の人が陽性になる確率)が低いように感じられます。自己検査で陰性で診察室で再度検査すると短時間で陽性判定が出ることが多いのです。



また、コロナやインフルエンザ以外にも発熱をきたす疾患は数多くあります。特に細菌性の髄膜炎、咽頭周囲炎、尿路感染、消化器炎(胆嚢炎や大腸形質炎)、皮膚感染などは、放っておくと敗血症といって細菌が血流に乗って多臓器不全に至ることがあります。

ぜひ、自己検査などせず、風邪薬を飲んで休めそうな人は2−3日様子をみる、いつもの風邪と違って症状が強い時はすぐに医療機関を受診しましょう。発熱外来は東京都のサイトで最寄りの医療機関を検索できます。
2022.11.20 16:05 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 診断治療
その44 この冬受けていただきたいワクチン
新型コロナやインフルエンザのワクチンは皆さん接種されていると思いますが、今回はその他にぜひ受けていただきたいワクチンをご紹介します。

それは、1)帯状疱疹ワクチン、2)肺炎球菌ワクチンと3)日本脳炎ワクチンです。

1)帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹は、幼少期に罹患した水痘ワクチンが、脊髄神経節内に感染し、疲労や感冒など免疫力が低下した際に帯状疱疹として神経に沿って出現します。米国では50歳で定期接種されていますが、日本では任意接種ですのでほとんど受ける方はいません。

今までは水痘用の生ワクチンが使用されていましたが、2020年1月より不活化ワクチンの「シングリックス」が発売されました。製薬会社のコマーシャルが盛んに放映されていますので、問い合わせが大変増えています。

シングリックスは値段が高く(1回22,000円、2回接種)局所の腫れが強いので、免疫力低下がないと考えられる方は、これまで通り水痘ワクチン(1回8,800円)を選択されるのが良いと思います。

水痘ワクチンは2016年3月より「50歳以上の帯状疱疹予防」目的で接種可能となりました。生ワクチンですが、医師が必要と認めれば、他のワクチンと同時接種も可能です。シングリックスに比べますと発症予防効果が低い(10年で20%抑制)と言われていますが、米国の水痘ワクチンよりも力価が高く(約30,000pfu)、小児用をそのまま帯状疱疹ワクチンに使用できます。副反応もほとんどありません。ただし、生ワクチンのため、免疫不全の方(白血病、抗がん剤使用中、AIDS)には使用できません。

<おすすめ>
50歳になったらなるべく早めに水痘ワクチンを打ちましょう。


2)肺炎球菌ワクチン 
元々肺炎は、がん、心血管障害に次いで、がん死亡順位第3位の疾患でしたが、2017年から死因に誤嚥性肺炎肺炎が追加されたため、現在は第5位になっています。変わって2019年から老衰が3位の座をキープしています。

成人肺炎のうち肺炎球菌が原因となるのは、17〜24%と報告されています(国立感染症研究所)。

免疫には体液性免疫(主に血液中の警備)と細胞性免疫(細胞に入り込んだ病原体の警備)の2種類があります。細胞性免疫は生まれつき備わっており、不特定の病原体から体を守っています。それに対して体液性免疫は、特定の病原体に対するタンパク質(抗体)を作り、体を守ります。

肺炎ワクチンには小児用のプレベナーと成人用のニューモバックスがあります。前者は主に細胞性免疫を後者は体液性免疫を賦活すると言われており、65歳以上あるいは喘息、高血圧、糖尿病などの基礎疾患が亞ある方は誰でも打つことが推奨されています。


日本では65歳になると各自治体から接種券が届き、接種料が無料あるいは助成されますが、基礎疾患のある方はなるべく早めに打つことをお勧めします。

米国疾病管理予防センター(CDC)によれば、
①65歳未満で喘息、高血圧、肥満、糖尿病、免疫抑制状態にある人は、プレベナーを最初に受け、8週後にニューモバックスを受けること、
②65歳未満で接種歴がある人は、5年以上空けて65歳以上でもう一度打つこと、
③65歳以上では1度接種すれば良い(平成21(2009)年より5年以上経過していれば再接種が禁忌でなくなりましたが、再接種による効果は証明されておらず、発熱、腫脹などの副反応を認めるため単独接種で良いとされています)、
と記されています。

<おすすめ>
喘息、高血圧、糖尿病などの基礎疾患がある人は、65歳以前に肺炎球菌ワクチンを2種類打ちましょう。

3)日本脳炎ワクチン
平成6年までは日本脳炎ワクチンが任意接種でしたので、ほとんどの方が未接種になっています。日本脳炎ウイルスはコロナウイルスやインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスです。日本人が欧米人と比較して新型コロナの発症率が低かったのは、日本脳炎ワクチンと種痘(天然痘ワクチン、1976年以降中止)のお陰と言われています。

実際、平成28年4月から定期接種になった北海道(昔はコダカアカイエカがいなかった)では、10万人あたりの新型コロナ発生率がダントツです(沖縄141人、東京418人、北海道1101人)https://covid-19.nec-solutioninnovators.com/

成人での接種は2回(少なくとも1週間空けて)行います。副反応はほとんどありません。幼少期に4回接種(3歳で2回、4歳で1回、9歳で1回)した人でも、ブースター(効果増強)として1回は接種しておくと、細胞性免疫が活性化して他のウイルスにもかかりにくくなります。当院スタッフも全員追加接種しています。当院では1回8,800円です。

<おすすめ>
成人の方は(子供の頃に4回接種した方でも)、日本脳炎ワクチンを追加で打ちましょう。平成9年より前に(青森県は平成14年より前、北海道では平成31年(令和元年)より前)生まれた方は、1週間から1ヶ月あけて2回接種が有効です。


水痘ワクチン、肺炎球菌ワクチン、日本脳炎ワクチンを3本同日に受けることが可能です。    以上です。
2022.11.16 15:16 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ
その43 女性ホルモンによる体調管理
閉経前のホルモン周期 エストロゲン(E)とプロゲステロン(P)で調節されています。



月経開始後12日ごろEがピークを迎えると、卵巣から排卵が起こり、卵巣からPが放出され、EとPの両方で子宮内膜を肥厚させ、妊娠に備えます。妊娠が成立しないと月経開始28日頃に子宮内膜が剥がれ、出血がおこります。月経前半はEとPが減少するので体調不良をきたします(月経前症候群)。

妊娠と女性ホルモン


妊娠が成立すると左図のようにEとPがどんどん増えていき、出産とともにEとPは一気にゼロになります。EとPが枯渇するので、1週間ぐらいは強い疲労感や眠気を感じます(産後うつ)。ここから1年間は乳汁分泌ホルモンの影響でEとPは増えません。

Eの変化と体調不良
45歳から55歳を更年期とよび、EとPのバランスが特に乱れるようになり、様々な不調が現れます(症状は300種類以上)。あらゆる検査で異常がみられない症状は、更年期症状を疑ってみることも必要です。



ホルモン補充療法(HRT: Hormone Replacement Therapy)
狭義のHRTは更年期症状に対するEの補充を指しますが、広義には月経前症候群に対する低用量ピルを含みます。Eは女性にとって若さ、元気の源で、Eが欠乏する更年期症状としては、ホットフラッシュ、頭痛、関節痛、手足の冷え、関節痛、筋肉量や骨量の低下、皮膚や粘膜の乾燥、気分の落ち込みなどが、Eの放出が不安定になる月経関連症状としては、頭痛、気分の落ち込み、情緒不安定、肌荒れ、睡眠障害、むくみなどの症状が現れます。

※閉経の判断は血液検査で、FSH(卵胞刺激ホルモン)>40mIU/mL、E2(卵胞ホルモン)<20g/mL

月経関連症(月経前症候群 PMS: Premenstrual syndrome)のホルモン療法

低用量ピルを使用します。保険適応のものと自費のものがありますが、いずれも月2000円前後です。低用量ピルには、最小限のEとPが適量含まれています。Eの副作用は、吐き気、むくみ、胸の張り、血栓、高血圧などですが、Eの量が極限まで減量されているので、ほとんど副作用は現れません。その代わり、規則的に服用しないと天然ホルモンの影響を受け、途中で出血することもありますので、服薬時間は毎日アラームをセットして規則正しく服用が必要です。合成のEとPを3週間服用して、1週間休むことで定期的に月経をこさせます。ピル服用中は天然のEとPは放出されないため排卵は起こりませんので、避妊のために服用する人もいます。エストロゲン依存性悪性腫瘍(乳がん、子宮がん)、血栓症、片頭痛、高血圧、糖尿病、喫煙者の方は服用できません。

更年期症候群のホルモン補充療法

更年期のホルモン補充療法は月経関連症に比べてさらに少量のE(4分の1)でコントロール可能です。子宮切除後の方はEのみ(エストラーナテープ:保険適応で月300円)、子宮がある方は子宮内膜の増殖を調節するためE+ P(メノエイドコンビ:保険適応で月1000円)をお勧めします。エストロゲン依存性悪性腫瘍と血栓症(下肢静脈血栓など)がある方ははできません。

子宮筋腫と子宮内膜症のホルモン補充療法

低用量ピルやP単独剤(ジェノゲスト)で天然のエストロゲンを止めます(詳細は割愛します)。

原因不明の症状にお悩みの女性は、女性ホルモンを適切に補充することで症状が改善する可能性がありますので、どうしてもお困りの症状がある方は内科や婦人科でご相談ください。

以上です。
2022.11.10 15:44 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ

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