その74 熱中症に有効な漢方薬
ニュースでご覧になった方も多いと思いますが、令和7年4月20日に労働安全衛生規則の変更により、本年6月から、事業主に「職場における熱中症予防基本対策要綱の策定」が義務づけられました。
熱中症とは「暑熱環境における身体適応障害によって発生する状態の総称」と定義*されています。これまで「熱失神、熱痙攣、熱疲労、熱射病」と分類されておりましたが、2024年より重症度は4つ**に分類されています。
I度は、めまい、吐き気、大量の発汗、筋けいれんで、意識障害を認めないもの。通常は現場で対応可能。
II度は、頭痛、嘔吐、虚脱感、判断力の低下を認めるもの。医療機関での診察が必要です。
III度は、体温が腋窩で38度以上で、意識障害、肝・腎機能障害、血液凝固障害のいずれかを認めた場合。入院治療が必要です。
IV 度では、表面温度40度以上または昏睡状態(GCS<8)をVI度と分類し、早急に積極的な冷却(activecooling)を行い、集中治療が必要となります。死亡率は30%以上となります。
冷所で安静を保つ受動冷却(passive cooling)と氷嚢、ジェルパッド、輸液などを使用して冷却する能動冷却(active cooling)があります。重症度IIからIVではactive coolingが必要になります。
熱中症が命に関わるのは、
①発汗による電解質(ナトリウム、
カリウム、カルシウム)の喪失、
②脱水による血液量減少による酸
素不足と血液の酸性化による神経
伝達異常、
③高体温による筋肉内のカルシウ
ム濃度の上昇、これらの結果、全
身の筋肉が痙攣し脱水や筋肉組織
(ミオグロブリン)の溶解が腎不全を
起こし、最終的には心臓が痙攣し
て死に至ります。
熱中症死亡者は2010年頃より急激に増えており、特に65歳以上の高齢者の割合が8割前後で推移しています。
今日は、熱中症に有効な漢方薬をご紹介します。こむら返りの特効薬と言われている「芍薬甘草湯」です。その機序は明らかになっておりませんが、芍薬は筋肉の緊張を緩め、甘草は肝機能を回復させます。実際に熱中症で筋痙攣を起こしている患者に芍薬甘草湯を投与して、筋痙攣が治った症例報告があります***。
激しい運動や長距離の歩行、そして暑い季節にはこむら返りが起こりやすくなります。夏には運動の前後に芍薬甘草湯を一袋ずつ服用することをお勧めいたします。
以上です。
*2008年日本医学会
**2024年度熱冷却方法はガイドライン(救急医学会)https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf
***熱中症に付随した有痛性筋痙攣に対する芍薬甘草湯の治療経験 https://doi.org/10.3937/kampomed.64.177
熱中症とは「暑熱環境における身体適応障害によって発生する状態の総称」と定義*されています。これまで「熱失神、熱痙攣、熱疲労、熱射病」と分類されておりましたが、2024年より重症度は4つ**に分類されています。
I度は、めまい、吐き気、大量の発汗、筋けいれんで、意識障害を認めないもの。通常は現場で対応可能。
II度は、頭痛、嘔吐、虚脱感、判断力の低下を認めるもの。医療機関での診察が必要です。
III度は、体温が腋窩で38度以上で、意識障害、肝・腎機能障害、血液凝固障害のいずれかを認めた場合。入院治療が必要です。
IV 度では、表面温度40度以上または昏睡状態(GCS<8)をVI度と分類し、早急に積極的な冷却(activecooling)を行い、集中治療が必要となります。死亡率は30%以上となります。
冷所で安静を保つ受動冷却(passive cooling)と氷嚢、ジェルパッド、輸液などを使用して冷却する能動冷却(active cooling)があります。重症度IIからIVではactive coolingが必要になります。
熱中症が命に関わるのは、
①発汗による電解質(ナトリウム、
カリウム、カルシウム)の喪失、
②脱水による血液量減少による酸
素不足と血液の酸性化による神経
伝達異常、
③高体温による筋肉内のカルシウ
ム濃度の上昇、これらの結果、全
身の筋肉が痙攣し脱水や筋肉組織
(ミオグロブリン)の溶解が腎不全を
起こし、最終的には心臓が痙攣し
て死に至ります。
熱中症死亡者は2010年頃より急激に増えており、特に65歳以上の高齢者の割合が8割前後で推移しています。
今日は、熱中症に有効な漢方薬をご紹介します。こむら返りの特効薬と言われている「芍薬甘草湯」です。その機序は明らかになっておりませんが、芍薬は筋肉の緊張を緩め、甘草は肝機能を回復させます。実際に熱中症で筋痙攣を起こしている患者に芍薬甘草湯を投与して、筋痙攣が治った症例報告があります***。
激しい運動や長距離の歩行、そして暑い季節にはこむら返りが起こりやすくなります。夏には運動の前後に芍薬甘草湯を一袋ずつ服用することをお勧めいたします。
以上です。
*2008年日本医学会
**2024年度熱冷却方法はガイドライン(救急医学会)https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf
***熱中症に付随した有痛性筋痙攣に対する芍薬甘草湯の治療経験 https://doi.org/10.3937/kampomed.64.177