RSVワクチン
一般的名称 販売開始年月 製造販売元 製法の概要 用法及び用量
アレックスビー筋注用 組換えRSウイルスワクチン 2024年 1月 グラクソ・スミスクライン株式会社 アジュバントを含有
融合タンパク質(PreF3)抗原を精製し、安定剤を加え充填した後、凍結乾燥 60歳以上の者に1回0.5mLを筋肉内に接種
アブリスボ筋注用 組換えRSウイルス2価ワクチン 2024年 5月 ファイザー株式会社 RSウイルスサブグループA(RSV-A)融合前Fタンパク質抗原
RSウイルスサブグループB(RSV-B)融合前Fタンパク質抗原 26週-36週妊婦(米国では32-36週)、6ヶ月までの新生児、乳児(14日以内の新生児の有効性は確立されていない)、60歳以上(米国、英国では75歳以上)

【私見】
いずれも遺伝子組換えタンパク質であり、不要な抗原抗体反応を惹起する可能性がある。ウイルスをホルマリン処理した不活化ワクチンならまだしも。日本での用法は60歳以上となっているが、CDCでは75歳以上となっており、ほとんど受ける意味がないのでは。。。75歳以上はもういいでしょう。

RSV感染症は罹患しても検出することが困難であり、その細胞障害性は乏しく、ホストの免疫応答により炎症が惹起されると言われている。発熱や倦怠感などの全身症状が乏しく、咳や痰がウイルス感染の免疫応答によって起こるならば、ステロイド吸入薬や抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬などで対症療法するのみです。成人ではRSVの抗原検査は行いませんし、行ったとしても感度は2-30%と言われています。つまり、喘息症状で内科を受診する人の一定の割合でRSV感染症が紛れていることが考えられます。

RSVに対する成人適応の抗ウイルス薬はありません。乳幼児向けはpalivizumab(シナジス筋注、製造アストラゼネカ、2013年2月発売,薬価1V100mg10万円)、nirsevimab(ベイ フォータス筋注 50 mg シリンジ、同筋注 100 mg シリンジ、製造アストラゼネカ、2024年5月発売、薬価100mgで90万)があります。乳幼児は重症化するので、必要不可欠な薬剤ですね。いずれも日本国内では、重篤な下気道疾患の発症抑制として、RSウイルス感染流行初期(秋)に基礎疾患のある新生児、乳児、幼児(24ヶ月齢以下)にのみの適応です。

以上のような理由で、成人においてはRSV感染診断意義は乏しいため、それに対するワクチンを接種する意義も乏しいと思い、当院では取り扱いを見合わせています。

2025/09/26追記

24週から36週の妊婦へのアブリスボ(組み換えRSウイルスワクチン)が2024年5月から販売されました。RSウイルス感染症は、生後2ヶ月で罹患率が100%であることを考慮すると、アブリスボ投与は有用であろうと考えます。米国では妊婦の50%に接種されているようです。ただし組み換えワクチンであることから、ある程度の副反応の覚悟が必要で、日本国内での接種は多くないようです。

2023年9月以来米国で28週から36週の妊婦10万人以上に接種されており、安全性は確立されているとのことです。

それよりもTdapを認可してもらいたいです。日本での認可はDTaP(小児用)のみで、これを成人に使用すると抗原量が多く、副反応が強くなると言われています。今のところ妊婦さんにワクチンについて相談された場合は、インフルエンザのみしかお勧めしていません。

日本小児科学会RSウイルス母子免疫ワクチンに関する考え方(2024-2-17)

英国健康安全局Updated 3 September 2025

乳幼児に対するRSV免疫について(CDC Aug. 18, 2025)

妊婦へのRSワクチン(CDC August 30, 2024)4月または5月誕生予定の妊婦には、RS流行期(秋から冬)に抗体価が下がるので、アブリスボ接種を推奨していない。秋にnirsevimabを子どもに接種することが望ましいなどと書いてある。一度アブリスボ接種された妊婦は、次の妊娠時には接種を勧めず、生まれた子どもにシーズン前に(4月から9月までに生まれた子どもは10月に、10月から3月に生まれた子どもは出産時に接種するそうだ。
2024.11.20 17:23 | pmlink.png 固定リンク | folder.png つぶやき

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