その41 EMDR (眼球運動によるストレス軽減)
あなたは1日のうちで「考えること」「感じること」のどちらが多いでしょうか。考える時は「言葉」が必要であり、感じるときは「言葉」より「こころ」が働きます。

相手の顔が見えないコミュニケーションに溢れている現代では、圧倒的に言葉の処理に追われて、常に何かを考えている状態かもしれません。一方で、素晴らしい風景を眺めているときには、「わーっ」と感動して言葉にならないことがあります。

以前の健康一口メモで、デフォルトブレインネットワーク(DBN)という脳のアイドリング状態について取り上げたのを覚えているでしょうか。人間は過度に集中しすぎると、脳がオーバーヒートを起こし、高次脳機能が一時的に低下してしまうのです。高次脳機能とは、注意、記憶、学習、計画遂行(てきぱきと仕事をこなすこと)、感情などを指します。

DBNは、車のエンジンで言えばアイドリングのような状態で、アクセルを踏んでいない時でも(集中していない時でも)静かに働いている、潜在的な脳の機能です。

脳内に保存されている情報をスキャンする状態であるため、思わぬアイデアが閃いたり、環境変化に対応しやすくなる、考えが柔軟になることがわかっています。集中が長時間にわたると、DBNが働かず、他人との柔軟な交流が図れなくなります。集中しない時間(ぼんやり時間)が大切なのです。

ただ仕事中にぼんやりすることはできません。それでは手っ取り早くDBN の状態に導く方法はないのでしょうか。

前置きが長くなりましたが、今日のテーマはEMDR (Eye Movement Desensitization and Reprocessing : 眼球運動による脱感作と再処理法)です。名前は長ったらしくて分かりにくいと思いますが、方法は至って単純です。目を閉じて、眼球を左右に規則正しく動かすだけです。数十秒も続ければ十分です(正式なセラピーは1時間以上かかりますが)。

不安や恐怖などの不快な感情は、最終的に前頭葉(前頭前野)という脳の表面で感知されますが、眼球を動かすことにより、動眼神経中枢である中脳という脳の深部が活性化されます。それにより、脳の表面の血流が低下し、不快な感情が消し去られてしまうのです。

EMDRは戦争帰還兵やレイプ被害者などに生じるパニック発作の治療に用いられています。本来はメトロノームや治療者の声に合わせたり体の一部を自らタップしながら行います。このようにすることで、脳内のパニックに至る神経ネットワークをリセットさせると考えられています。

いずれにせよ「疲れたな」「いろいろ考えて眠れないな」という時に、数十秒でも良いのでやってみると結構頭がすっきりします。私も先日歯科治療中に、歯をウィーン、ガリガリと削られて体がこわばっていた時に目を閉じて左右に動かしていましたら、これまでの恐怖心が半分ぐらいに緩和されました。

皆さんも是非電車の中で、布団の中で、試してみてください。

以上です。
2022.09.20 19:50 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ

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