その21 うつ病を予防する生活習慣
前回「褒めよう。私たちを。」で我々の感染対策がいかに効果を発揮しているか、いくつかのデータを示しました。しかし、著しい寒波とPCR検査の拡大とともに感染者(大半は無症状)が増え、昨日には1都3県で2回目の緊急事態宣言が発出されました。

残念です。もっと褒めてくれてもいいのに。

そんな中で今回のテーマは「うつ病を予防する生活習慣」です。

うつ病は「やる気がしない」「億劫だ」「気分が落ち込む」という状態が続く病気です。どこまでが病気なのかという議論はありますが、今回は省きます。
うつ病は大きく2つに分類されます。一つは「内因性うつ」、もう一つは「反応性うつ」です。簡単に説明すると、前者は特に環境の変化がないのに上記の症状が続いている状態です。後者は環境の変化をきっかけにして上記の症状が続いくものを指します。前者は几帳面で真面目な人がなりやすく、後者は認知行動特性(考え方や生活習慣)が関係していると言われています(最近はこの他に「未熟型うつ」という、依存、回避を特徴とするものも注目されています。これは薬で悪化します)。

前者は抗うつ薬が効きやすいですが、後者は薬が効きにくく、認知行動療法(考え方や生活習慣を改める)が有効です。実際は内因性と反応性の両方を併せ持っていることが多く、治療は最低限の薬物療法と認知行動療法を組み合わせて行われます。

成人病を予防するために食事・運動療法が有効であるのと同様、うつ病を予防するためには、考え方や行動に気をつけることが大切です。

認知(考え方)のコツとしては、心のストライクゾーを広くすること。「こうしなければいけない」「これではダメ」と考えるのではなく「これでいいのだ」「まっいっか」と考えるようにしましょう。

行動習慣で大切なことは、疲れたら体を動かしてから休むということです。ただ休んでしまうと血の巡りが悪くなり、体内に疲労物質(乳酸)が溜まりやすくなります。軽くストレッチしてから休みましょう。また、やる気がしない時も体を動かすことで、脳からやる気のホルモン(アドレナリン、ドーパミンなど)が放出されます。

特に、朝目覚めてから布団を出るまでの行動が重要です。もう少しと思って二度寝するよりも、布団を蹴飛ばして体を動かすと脳がスッキリします。私は朝目覚めたら部屋を明るくして、布団の中で腹筋100回、背筋(水泳のバタ足)100回を習慣にしています。

1日のスタートが良ければ、その日の気分も違ってきます。
皆様もぜひ試してみてください。

参考文献:
未熟型うつ病と双極スペクトラム 阿部隆明著
疲れたら動け 小林弘幸著

以上です。
2021.01.08 19:40 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ
その20 「ほめよう。わたしたちを。」
新型コロナの第3波が押し寄せています。賑わいを見せていたGO toキャンペーンも制限 がかかることが報道されています。
そんな中、昨日電車の中吊り広告で、女性の笑顔が大写しになっている「ほめよう。わた したちを。」というコピーを見て、思わず目頭が熱くなってしまいました。
今回は多くのグラフを眺めていただきます。
3月30日の一斉登校中止、4月7日の緊急事態宣言後、私達はどれだけのことを我慢してき たでしょうか。グラフを眺めると私達の我慢の成果を確認することができます。 グラフは東京都感染症情報センター(https://survey.tokyo-eiken.go.jp/)が集計した定点報 告(都内に1万ある小児科、内科診療所のうち419箇所が毎週の症例数を報告)したもの です。赤い線が2020年の症例数を示します。

1.インフルエンザ感染者数


インフルエンザの減少に関しては新型コロナ流行による影響が考えられます。

2.インフルエンザ重傷者


インフルエンザの重傷者はピーク時は、都内のみで毎週50−100人ぐらい発生します。新型 コロナは12月2日時点で都内に53人いらっしゃいます。

3.感染性胃腸炎(お腹の風邪)


4. RSウイルス(子供の気管支肺炎)


5.咽頭結膜熱(プール熱)


6.水ぼうそう


7. 溶連菌(喉の細菌感染)


8.手足口病


どうでしょうか。私達の我慢が、これだけの病気を減らしたと考えられないでしょうか。

次のフラフは厚労省が11月20日に発表した人口動態速報です。https://www.mhlw.go.jp/ toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/s2020/dl/202009.pdf



青は2019年、赤は2020年の毎月の死亡数を表しています。1月から9月までの死亡者数を

昨年と比較すると、18,000人も減少しています。

ただ一方で残念なことに自殺者はやや増加傾向です。


一生懸命我慢している自分を褒めて、気持ちを上げましょう。



(digital platformより

以上です。

https://digitalpr.jp/r/43141)


2020.12.05 19:25 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ
その19 アンガーマネジメントとストレスコーピング
コロナ禍の生活で人々のストレスが高まっていると言われています。経済の停滞、雇用率の低下、人々が集う楽しみがことごとく禁止されており、ストレス発散ができなくなっています。

街中でもマスクの付け方を巡ってのイザコザやSNS上での誹謗中傷などが毎日のようにニュースになっています。実際の診療においても、リモートワークの些細な言葉の行き違いで会社に行けなくなるケースを経験します。

今回は、イライラした気持ちをリセットするアンガーマネジメントや日頃のストレスを軽減するストレスコーピングをご紹介します。

1.Anger management
ふつふつと湧いてきた怒りを鎮める方法として、

1)話す前に考える、深呼吸する
2)しばらく黙り、考えをまとめてから話し始める
3)体を動かす
4)短時間でも休憩をとる
5)ストレスフルな話題の中に一理はないか考える
6)ストレスの原因を作った相手を恨まない。許す気持ちを持つ
7)ユーモアある表現を心がける
8)怒りが込み上げてきた時に肩から腕の力を完全に抜く

上記のことは、あまり怒りが激しくなってしまうとできなくなりますので、日頃からストレスを溜めないことが大切になります。

2.Stress coping
よく「私はストレスなどありません」という方がいますが、ストレスがどのような形で現れるか理解することが重要です。

ストレスは次の5つの形に現れることを理解します。

1)気分の落ち込み(不安、緊張、焦燥)
2)身体の反応(血圧上昇、頭痛、腹痛、腰痛)
3)不健康な習慣(飲酒量、喫煙数の増加、過食)
4)仕事効率の低下(着手できない、段取りできない、ケアレスミス)
5)人間関係がうまく行っていない

特に女性では頭痛、過食が、男性では腹痛、飲酒、喫煙量の増加がストレスの現れであることが多いです。4)5)は性別問わずよく見られます。

日頃のストレスを溜めないようにするには、体の力を抜いて、良いイメージを浮かべ、ゆっくり息を吐いてリラックスします。

また、やるべきことをリストアップし時間を決めて計画的に行動する、食べすぎ飲みすぎを改める、悩んでいることを信頼できる人(医師でもよい)に相談する、などが有用です。

私は診察中、座禅の呼吸を実践しています。背筋を伸ばし、肩の力を抜いて、鼻からからゆっくり息を吐くようにします。息を吐くときにお腹を凹ますようにします。すると、体中の血液がお腹の部分に集まって、頭に血が上らなくなります。

心身の疲れが溜まりにくくなりますのでみなさんもぜひお試しください。

以上です。

Anger management: 10 tips to tame your temper(Mayoclinic)
Stress Management and Emotional Health(Cleveland Clinic)
2020.11.05 19:39 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ
その18 自然免疫(innate immunity)を鍛えましょう
日々の気温が20度を下回るようになり、すっかり秋めいてきました。今年も秋は短そうで、酷暑の夏から厳寒の冬へ向かおうとしています。

10月になりインフルエンザワクチン接種が始まりましたが、今年の冬は新型コロナウイルス感染症の影響で、単なる風邪では済まされない悩ましい時期に突入します。新型コロナウイルス治療薬アビガンは今月中にも認可されそうですが、ワクチンの認可は年内には難しそうです。

そこで今回のテーマは自然免疫(innate immunity)です。自然免疫とは我々が生まれながら備え持っている、外敵(細菌、ウイルス、寄生虫など)に対する非特異的な身体防御システムです。それに対して、特異的な防御システムを獲得免疫(acquired immunity)といい、これは麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)など特定なウイルスや菌に対する「抗体」を指します。

また、インフルエンザウイルスやコロナウイルスは一本鎖RNAウイルスに分類されますが、非常に変異を起こしやすいので、獲得免疫(抗体)が産生されにくいと言われています。抗体を作っても相手のタンパク質がコロコロ変わって対応できないからです。そのような場合は自然免疫の段階で、つまり粘膜でマクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞などが活躍して殺菌します。

今年の冬はインフルエンザやコロナから体を守るため、自然免疫を大いに強化する必要があります。どうすればいいのでしょうか。一般的には食事、睡眠、飲酒・喫煙を控える、適度な運動などが推奨されます。

私は医師になって32年間、日曜以外診療を休んだことはありませんが、年に1~2回は風邪をひきます。それは決まって深酒をした翌日か寝不足が続いた時です。酔っ払って口を開けて寝ていると、喉の粘膜がカラカラに乾燥して、局所の免疫力が極端に低下します。

一方で、寝不足になると脳からコルチゾールというストレスホルモンが放出されて、白血球の働きが抑えられてしまうのです。ちなみに白血球が働きすぎても、関節リウマチや喘息、花粉症のように体に余計な炎症を起こすので困ります。このような時は、逆にコルチゾールのようなステロイドホルモンで白血球の働きを抑える治療が行われます。

今回は自然免疫を高めるため、ストレスホルモンであるコルチゾール(cortisol)を減らしましょうという話です。

コルチゾールは血管を収縮させ血の巡りが悪くなり、白血球の働きを抑えるため色々な病気にかかりやすくなってしまうのです。体内のコルチゾールを下げるには、

1)適度な睡眠・運動をこころがける。
2)野菜・キノコ類を多めにとる。
3)イライラしない、心にゆとりを持つ。感謝の気持ちを持つ。
4)リラクゼーション(ヨガ・瞑想)を行う。
5)楽しいことをする。笑う。
6)友達、家族との付き合いを大切にする。
7)植物や動物の世話をする。
8)自らの力不足を勉強して補う。悪い習慣(2度寝、長時間のPCゲーム)を正す。
9)信心する(神社やお寺、お墓やお仏壇にお参りをする)。
10)深酒しない(自戒)。飲酒を控える。

などの方法があります。1)から7)まではよく言われる事ですが、8)や9)はやってみるとストレス解消になりそうですね。

自然免疫を鍛えて今年の冬を元気に乗り越えましょう。

以上です。

下記サイトを参考に改変しました。
https://www.healthline.com/nutrition/ways-to-lower-cortisol#TOC_TITLE_HDR_2
2020.10.07 19:39 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ
その17 今年の冬に備えるワクチンのお話
今年の冬は新型コロナとインフルエンザの両方を注意しなければなりません。特に前者は今のところ治療薬がありませんので、予防が大切になってきます。

結論を先に書きます。今年の冬に備えて予防接種をうちましょう。今回お伝えしたいことは3つです。

1)日本脳炎ワクチンの追加接種(19歳以上の方全員)8000円前後 1回

2)13価肺炎球菌ワクチン(年齢制限なし。基礎疾患のある方)10000円前後 1回

3)インフルエンザワクチン (10月から開始、6ヶ月~12歳は2回、13歳上1回)4500円前後

3)の前に1)2)を受けておくことが望ましい。同時接種可能。私も先週うちましたw。

理由を述べます。

1)最近日本脳炎ワクチンが、新型コロナウイルス感染症に交差免疫を認める可能性が報告されています。日本脳炎の定期接種は、日本、中国、韓国、台湾、マレーシア、タイ、スリランカ、ベトナム、ネパールで行われています。そしてこれらの国では、新型コロナウイルス感染症の死亡率が低いのです。日本国内で唯一定期接種されていなかった北海道(平成28年4月より定期化)では、日本国内で最初に緊急事態宣言が出されたのは記憶に新しいと思います。

日本脳炎ワクチンは2-3歳で2回、4-5歳で1回、9歳で1回接種しますが、その後追加接種は任意となっています。ほとんどの方が最終接種から10年以上経過していると思いますので、ぜひ追加して効果増強(ブースト)を図ってください。

日本脳炎ウイルスは、新型コロナウイルス感染症と同じ一本鎖+(プラス)鎖RNAウイルスです。遺伝子の設計図が1本のRNAからできていて、細胞内に感染するとRNAが細胞内でタンパク質を作る非常に似通ったウイルスです。
日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンといって、ウイル粒子をバラバラにして投与するので、副反応もほとんどありません。

2)肺炎球菌ワクチンは、風邪をこじらせた際の肺炎を防ぐワクチンです。風邪の原因はウイルスですが、症状が長引くと免疫力が低下するため、細菌感染を起こしやすくなります。肺炎球菌ワクチンには2種類あります(平成25年まで使用されていたプレベナー7(PCV7)を入れると3種類)。プレベナー13(肺炎球菌結合ワクチン:PCV13)とニューモバックス(肺炎球菌ポリサッカライドワクチン:PPSV23)です。

肺炎球菌は90以上の血清型があり、乳幼児の鼻腔常在菌で、免疫力が低下したときに中耳炎や髄膜炎の原因になります。ワクチンに示されている数字は含まれている血清型の種類です。日本では平成23年に4歳下の乳児幼児に対してPCV7の定期接種が始まり、平成25年には7価から13価へ変更されています。

一方ニューモバックスは多くの自治体で65歳以上から公費負担されている定期接種です。添付文書上は2歳以上から接種することができ、高齢者に限らず、喘息や糖尿病など基礎疾患を有する方は、任意で接種することが望ましいと言われています。一方、既にニューモバックスをすでに受けた方でも、1年以上あけてプレベナーを接種することが推奨されています(米国では先にプレベナーを接種し、1年後にニューモバックスを接種。日本ではどちらが先でもいいとされています)。

繰り返しになりますが、基礎疾患(喘息、高血圧、糖尿病)がある方は、65歳まで待たずに早めに受けた方が良いと思います。順番はまずプレベナー13、1年から4年後にニューモバッックスです。

3)インフルエンザワクチンは毎年2~6月に決定され9月までに生産されます。A型は膜蛋白H16種類、N9種類で計144種類に分かれます。B型はビクトリア型、山形型の2種類です。毎年のワクチンはA型2種類、B型2種類が含まれた4価のワクチンです。今年の生産量は約3000万本(大人換算で6000万人分)と例年通りの量ですが、新型コロナの影響で希望者が殺到することが予想されます。
多少のお金がかかっても必要なワクチンは済ませておきましょう。そうしないとあとからお金と時間がとられます!
以上です。
2020.09.01 19:38 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ

- CafeLog -