その31 わかってきた新型コロナの特徴とこの冬の対策
今回は1年8ヶ月の新型コロナ感染症についての知見をまとめてみたいと思います。
新型コロナワクチンは武漢株以外には効果が低下する
日本同様70%以上の国民が接種済みのイギリス、イスラエル、シンガポールでも2021年10月より感染者が増加しています。武漢株に対して95%以上の効果を持つワクチンですが、RNAウイルスである新型コロナウイルスは自己修復能が乏しいため、2週間に1度の割合でSタンパク(ウイルス表面にあるタンパク質)の変異が起こっており、Sタンパクのみを標的としたワクチンの効果はどんどん低下します。
半端ない新型コロナワクチンの副反応
新型コロナワクチン(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ)のいずれのワクチンも、2人に1人以上の割合で高熱や倦怠感をきたし、接種翌日は休養が必要です。ファイザー発表の接種後の発熱は6人に1人でしたが、日本人に於いては副反応の頻度が高く、中には40度近い熱が数日続く人もいました。こんなに副反応の強いワクチンは類を見ません。来年秋に上梓予定の、不活化ワクチン(KMバイオ)が待ち遠しいです。
新型コロナワクチンは日本人には不要
アメリカ、イスラエルではワクチン接種後の罹患率(新型コロナに罹る人)は、接種前の10分の1に減少しました。それでもワクチン接種前の日本人の3倍かかりやすい状態です。世界の状況を見ると、アジア人では感染率も死亡率も低くなっています。上記のような副反応を考慮すると、50代以下の健康な人は、ワクチンを受けない方がいいと思います。すでに日本国民の70%以上が接種していますが。。。米国では5歳から11歳へのワクチン接種が始まっていますが、来年秋まで待ちましょう。
ワクチンによって軽症化しているのではなく、単にウイルス変異によって軽症化している
ワクチンが導入される以前の第1波、第2波は世界中でほぼ同時に始まり自然消滅しています。ジョンズホプキンス大学サイトで、世界の感染者数と死亡者数のグラフを眺めていると、ワクチン導入以前であっても、時間経過とともに死亡率が低下していることがわかります。
ウイルス流行と消退は自然現象
「第5波が消失したのはワクチン接種の影響」と述べる専門家が多いですが、コロナウイルスのような不安定(RNA一本鎖)なウイルスは、流行しすぎるとホスト(ヒト)の免疫が高まるため、それから逃れようとして(免疫逃避)変異傾向が強まり、複製ミスが起こり、自滅すると考えられています。コロナの流行は、イギリスのようにいきなりロックダウン解除するようなことがなければ、正規分布の形で推移します。
インフルエンザワクチンの有効性は新型コロナワクチンのそれを上回る
罹患率が5人に1人のインフルエンザと100人に1人の新型コロナ。ワクチンの効果efficacy (相対危険度低下)は、インフルエンザで70%、新型コロナで95%です。有効性effectiveness (絶対危険度低下)は、インフルエンザは1.6%(60人に1人の予防に寄与する NNV=60)、新型コロナは0.7%(130人に1人の予防に寄与するNNV=130)。実社会では、効果の低いインフルエンザの方が、効果の高い新型コロナワクチンより、有効性が高いのです。また、インフルエンザワクチンが、新型コロナ感染の予防効果があるとの報告も出ています。インフルエンザワクチンは、副反応もほとんどないのでぜひ接種しましょう。
第6波は必ず来る?
ウイルス感染(コロナ以外も含め)は台風と同じ自然現象なので、必ず定期的に流行します。ロックダウンしてもワクチンを打っても必ず流行は抑えられません。動物が媒介しますので。PCRや抗原検査を頻回に行っても無意味です。コロナであれば変異を重ねてさらに重症化しにくくなると思われます。もし今年インフルエンザが流行れば、ここ2年間インフルエンザの患者はほぼゼロでしたので、人々の免疫も低下していることもあって、爆発的に増えるでしょう。インフルエンザは子供に罹患しやすく、肺炎や脳症に至ることもあるので注意が必要です。
今年の冬への備え
1)インフルエンザワクチンを打ちましょう。
2)高血圧、糖尿病、肥満、喘息がある人は、年齢に関わらず肺炎球菌ワクチン(プレベナー、2ヶ月後にニューモバックス)を打ちましょう。
3)体調管理と他人へ感染させないような生活を心がけましょう。
私も健康な50代(58歳、孫1人)のため新型コロナワクチンは打っていません。インフルエンザ、肺炎球菌2種、日本脳炎を打ちました。お酒(燗酒)を毎日2合飲んでいます。健康診断で指摘事項はありません。自己管理はストレッチを毎日、筋トレは1日おきにやっています。毎朝犬(柴犬、ハチ)の散歩をしています。新型コロナの患者さんも数十人ですが診察することができました。
皆さんも必要なワクチンを接種し、自己管理を怠らず、今年の冬を無事に乗り越えましょう。来年初めには新型コロナも指定感染症から外れ、インフルエンザ同様の扱いになるものと思われます。そうすればまた、大勢でワイワイやることができるようになるでしょう。
以上です。
Coronavirus COVID-19 Global Cases (Johns Hopkins University)
Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant
N Engl J Med. 2021 Aug 12;385(7):585-594.
H.H., Boucau J., Bowman K., et al. Persistence and Evolution of SARS-CoV-2 in an
immunocompromised host. N. Engl. J. Med. 2020;383:2291?2293.
Transmission, infectivity, and neutralization of a spike L452R SARS-CoV-2 variant. Deng X, et al.
Cell. 2021 Jun 24;184(13):3426-3437.e8.
新型コロナワクチンは武漢株以外には効果が低下する
日本同様70%以上の国民が接種済みのイギリス、イスラエル、シンガポールでも2021年10月より感染者が増加しています。武漢株に対して95%以上の効果を持つワクチンですが、RNAウイルスである新型コロナウイルスは自己修復能が乏しいため、2週間に1度の割合でSタンパク(ウイルス表面にあるタンパク質)の変異が起こっており、Sタンパクのみを標的としたワクチンの効果はどんどん低下します。
半端ない新型コロナワクチンの副反応
新型コロナワクチン(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ)のいずれのワクチンも、2人に1人以上の割合で高熱や倦怠感をきたし、接種翌日は休養が必要です。ファイザー発表の接種後の発熱は6人に1人でしたが、日本人に於いては副反応の頻度が高く、中には40度近い熱が数日続く人もいました。こんなに副反応の強いワクチンは類を見ません。来年秋に上梓予定の、不活化ワクチン(KMバイオ)が待ち遠しいです。
新型コロナワクチンは日本人には不要
アメリカ、イスラエルではワクチン接種後の罹患率(新型コロナに罹る人)は、接種前の10分の1に減少しました。それでもワクチン接種前の日本人の3倍かかりやすい状態です。世界の状況を見ると、アジア人では感染率も死亡率も低くなっています。上記のような副反応を考慮すると、50代以下の健康な人は、ワクチンを受けない方がいいと思います。すでに日本国民の70%以上が接種していますが。。。米国では5歳から11歳へのワクチン接種が始まっていますが、来年秋まで待ちましょう。
ワクチンによって軽症化しているのではなく、単にウイルス変異によって軽症化している
ワクチンが導入される以前の第1波、第2波は世界中でほぼ同時に始まり自然消滅しています。ジョンズホプキンス大学サイトで、世界の感染者数と死亡者数のグラフを眺めていると、ワクチン導入以前であっても、時間経過とともに死亡率が低下していることがわかります。
ウイルス流行と消退は自然現象
「第5波が消失したのはワクチン接種の影響」と述べる専門家が多いですが、コロナウイルスのような不安定(RNA一本鎖)なウイルスは、流行しすぎるとホスト(ヒト)の免疫が高まるため、それから逃れようとして(免疫逃避)変異傾向が強まり、複製ミスが起こり、自滅すると考えられています。コロナの流行は、イギリスのようにいきなりロックダウン解除するようなことがなければ、正規分布の形で推移します。
インフルエンザワクチンの有効性は新型コロナワクチンのそれを上回る
罹患率が5人に1人のインフルエンザと100人に1人の新型コロナ。ワクチンの効果efficacy (相対危険度低下)は、インフルエンザで70%、新型コロナで95%です。有効性effectiveness (絶対危険度低下)は、インフルエンザは1.6%(60人に1人の予防に寄与する NNV=60)、新型コロナは0.7%(130人に1人の予防に寄与するNNV=130)。実社会では、効果の低いインフルエンザの方が、効果の高い新型コロナワクチンより、有効性が高いのです。また、インフルエンザワクチンが、新型コロナ感染の予防効果があるとの報告も出ています。インフルエンザワクチンは、副反応もほとんどないのでぜひ接種しましょう。
第6波は必ず来る?
ウイルス感染(コロナ以外も含め)は台風と同じ自然現象なので、必ず定期的に流行します。ロックダウンしてもワクチンを打っても必ず流行は抑えられません。動物が媒介しますので。PCRや抗原検査を頻回に行っても無意味です。コロナであれば変異を重ねてさらに重症化しにくくなると思われます。もし今年インフルエンザが流行れば、ここ2年間インフルエンザの患者はほぼゼロでしたので、人々の免疫も低下していることもあって、爆発的に増えるでしょう。インフルエンザは子供に罹患しやすく、肺炎や脳症に至ることもあるので注意が必要です。
今年の冬への備え
1)インフルエンザワクチンを打ちましょう。
2)高血圧、糖尿病、肥満、喘息がある人は、年齢に関わらず肺炎球菌ワクチン(プレベナー、2ヶ月後にニューモバックス)を打ちましょう。
3)体調管理と他人へ感染させないような生活を心がけましょう。
私も健康な50代(58歳、孫1人)のため新型コロナワクチンは打っていません。インフルエンザ、肺炎球菌2種、日本脳炎を打ちました。お酒(燗酒)を毎日2合飲んでいます。健康診断で指摘事項はありません。自己管理はストレッチを毎日、筋トレは1日おきにやっています。毎朝犬(柴犬、ハチ)の散歩をしています。新型コロナの患者さんも数十人ですが診察することができました。
皆さんも必要なワクチンを接種し、自己管理を怠らず、今年の冬を無事に乗り越えましょう。来年初めには新型コロナも指定感染症から外れ、インフルエンザ同様の扱いになるものと思われます。そうすればまた、大勢でワイワイやることができるようになるでしょう。
以上です。
Coronavirus COVID-19 Global Cases (Johns Hopkins University)
Effectiveness of Covid-19 Vaccines against the B.1.617.2 (Delta) Variant
N Engl J Med. 2021 Aug 12;385(7):585-594.
H.H., Boucau J., Bowman K., et al. Persistence and Evolution of SARS-CoV-2 in an
immunocompromised host. N. Engl. J. Med. 2020;383:2291?2293.
Transmission, infectivity, and neutralization of a spike L452R SARS-CoV-2 variant. Deng X, et al.
Cell. 2021 Jun 24;184(13):3426-3437.e8.
その30 ぼんやり(unfocus)のススメ
10月1日から緊急事態宣言が解除され、新型コロナの第5波も収まりつつあります。通勤電車の混み具合が増してきたように感じます。座って寝ている人もいますが、起きている人はほとんど本を読んだりスマホを見ています。
今日のテーマは、ぼんやり(unfocus)の勧めです。
2001年に米国の権威ある医学誌に、Default Brain Network(既定の脳内ネットワーク:DBN)という概念*が発表されました。DBNは、車のエンジンで言えばアイドリングのような状態で、アクセルを踏んでいない時でも(集中していない時でも)静かに働いている、潜在的な脳の機能と言えます。車はずっとアクセルを踏み続けていると、エンジンが熱くなりすぎて、ピストンとシリンダーが溶けて動かなくなる「焼け付き(オーバーヒート)」を起こしてしまいます。
つまり、過度に集中しすぎると脳がオーバーヒートを起こし、高次脳機能が一時的に低下してしまうのです。高次脳機能とは、注意、記憶、学習、計画遂行(てきぱきと仕事をこなすこと)、感情などを指します。低次脳機能という用語はありませんが、視覚野、聴覚野、運動野、知覚野という脳の基本的領域が複雑に連絡(連合野)し合い、高次脳機能を形成しています**。
一方でDBNは、脳内に保存されている情報をスキャンする状態であるため、思わぬアイデアが閃いたり、環境変化に対応しやすくなる、考えが柔軟になることがわかっています。集中が長時間にわたると、DBNが働かず、他人との柔軟な交流が図れなくなります。集中しない時間(ぼんやり時間)が大切なのです。ぼんやりすることで心が柔軟(psychological flexibility)になり、いわば精神的なストレッチと言ってもいいでしょう。
DBNは、次のような時に活性化すると言われています。公園をぶらぶら歩く、芝生に寝っ転がって空を眺める、編み物、ガーデニングにいそしむ、自分の過去の思い出に浸ったり、将来の夢や恋人を想ったりする時などです。過去のあらゆる情報が統合されて、思考の幅が広がります。同時に他人の気持ちを汲み取りやすくなり、組織をまとめるにも役立ちます。
実際にアスリートはパフォーマンスを発揮するために、視線をunfocusすることが有用と言われています***。一点に集中するような視線は、首の筋肉を硬直させ、体の動くを妨げます。武道の教えでも、構えるときは相手を含めて周囲の風景全体を捉えるようにと習います。相手を睨みつけるような視線は、反射神経を鈍らせるからです。
長時間PCのモニターに集中している毎日ですが、たまにはぼんやり時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
と言いつつ、満員電車の中でこの原稿を書いていますw。
* A default mode of brain function. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 https://doi.org/10.1073/pnas.98.2.676
** 高次脳機能 平成帝京大学 臨床心理学研究科 中島恵子 https://www.normanet.ne.jp/~RPA/index2_1.html
*** 理学療法士 中野崇氏 https://jarta.jp/about/trainingtheory/#c
今日のテーマは、ぼんやり(unfocus)の勧めです。
2001年に米国の権威ある医学誌に、Default Brain Network(既定の脳内ネットワーク:DBN)という概念*が発表されました。DBNは、車のエンジンで言えばアイドリングのような状態で、アクセルを踏んでいない時でも(集中していない時でも)静かに働いている、潜在的な脳の機能と言えます。車はずっとアクセルを踏み続けていると、エンジンが熱くなりすぎて、ピストンとシリンダーが溶けて動かなくなる「焼け付き(オーバーヒート)」を起こしてしまいます。
つまり、過度に集中しすぎると脳がオーバーヒートを起こし、高次脳機能が一時的に低下してしまうのです。高次脳機能とは、注意、記憶、学習、計画遂行(てきぱきと仕事をこなすこと)、感情などを指します。低次脳機能という用語はありませんが、視覚野、聴覚野、運動野、知覚野という脳の基本的領域が複雑に連絡(連合野)し合い、高次脳機能を形成しています**。
一方でDBNは、脳内に保存されている情報をスキャンする状態であるため、思わぬアイデアが閃いたり、環境変化に対応しやすくなる、考えが柔軟になることがわかっています。集中が長時間にわたると、DBNが働かず、他人との柔軟な交流が図れなくなります。集中しない時間(ぼんやり時間)が大切なのです。ぼんやりすることで心が柔軟(psychological flexibility)になり、いわば精神的なストレッチと言ってもいいでしょう。
DBNは、次のような時に活性化すると言われています。公園をぶらぶら歩く、芝生に寝っ転がって空を眺める、編み物、ガーデニングにいそしむ、自分の過去の思い出に浸ったり、将来の夢や恋人を想ったりする時などです。過去のあらゆる情報が統合されて、思考の幅が広がります。同時に他人の気持ちを汲み取りやすくなり、組織をまとめるにも役立ちます。
実際にアスリートはパフォーマンスを発揮するために、視線をunfocusすることが有用と言われています***。一点に集中するような視線は、首の筋肉を硬直させ、体の動くを妨げます。武道の教えでも、構えるときは相手を含めて周囲の風景全体を捉えるようにと習います。相手を睨みつけるような視線は、反射神経を鈍らせるからです。
長時間PCのモニターに集中している毎日ですが、たまにはぼんやり時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
と言いつつ、満員電車の中でこの原稿を書いていますw。
* A default mode of brain function. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 https://doi.org/10.1073/pnas.98.2.676
** 高次脳機能 平成帝京大学 臨床心理学研究科 中島恵子 https://www.normanet.ne.jp/~RPA/index2_1.html
*** 理学療法士 中野崇氏 https://jarta.jp/about/trainingtheory/#c
その29 新型コロナにかかったらどうする?どうなる?
朝夕涼しい風が吹き、秋の気配が感じられるようになってきました。
新型コロナはデルタ株による第5波が猛威を振るい、ワイドショーでは自宅療養者の症状が急に悪化しても、入院できないという差し迫った映像を流しています。中には乳児が新型コロナに感染し、人工呼吸を受けているシーンも放映されています。
そろそろ皆さんの周りにも、新型コロナに感染した人が散見されるのではないでしょうか。明日は我が身かもしれません。或いは家族がかかるかもしれません。
今日のテーマは「新型コロナにかかったらどうする?どうなる?」です。
もし家族が感染したら、自身は濃厚接触者です。家族が治癒(発症後10日間)してから、更に14日間の経過観察が必要です。家族が治るまで10日間、それから更に14日間、計24日の自宅待機が保健所から指示されるそうです。これは今でも厚労省のサイト*1に示されていますが、その根拠は昨年2月の日本環境感染学会の提言*2です。
しかし、これではエッセンシャルワーカーの仕事が成り立ちませんので、今年の8月になって「医療従事者に限っては濃厚接触者でもすぐに勤務できる」という文書が厚労省から示されました。
濃厚接触者の定義は、①患者と同居、車内や飛行機で長時間接触、②マスクなしで患者と15分以上1?2mで接触があった場合、などですが、保健所が総合的に判断して決定します*3。
もし職場で新型コロナ感染者が出たらどうなるでしょう。最近はリモートワーク中心になっていますので、そのような場合は問題ないと思います。もしオフィス出勤者が発症するとどうでしょうか。1年ぐらい前は、当ビルのオフィスでも感染者が出て、保健所の指示で濃厚接触者のPCR検査が行われました。
最近では、「初動対応における接触者」への検査*4が重要視されています。すなわち社内で感染者が発生した時、保健所の指示を待たずに、患者との接触が考えられる者に、抗原検査やPCR検査を積極的に行うことが求められています。
もし自分自身がコロナにかかったらどうなるのでしょう。病院でコロナと診断されると24?48時間以内に居住地の保健所から電話連絡があります。感染経路などについての質問の後、健康観察が行われ、軽症(酸素飽和度96%以上または基礎疾患のない人)であれば、宿泊療養を勧められます。ホテル宿泊を希望しない人は自宅療養になります。中等症(酸素飽和度95%以下で基礎疾患のある人)は、入院の指示があります。
現在、都内のコロナ病床6000床のうち4200床が入院中で、入院基準が厳しくなっています。軽症者は原則ホテルでの健康観察を勧められますが、9月1日時点でのホテル療養者は2180人(3370受入可能)、自宅療養は約20000人で、ほどんどの人が自宅療養を希望しています。入院調整中は6800人です*5。狭い部屋に閉じ込められて、好きなものを食べられない環境は、適切な療養環境とはいえませんから当然の結果だと思います。
自宅療養中は毎日一度保健所から健康観察の電話が入ります。パルスオキシメーターの貸与と1週間分の食料(カップ麺、レトルト食品)が届きます(発症から4?5日かかる)。一人暮らしの人は、デリバリーで食料を買うか、近所で必要最低限の買い物をします。発症後10日かつ解熱後72時間経過した時点で治癒と判断され、療養は終了です。
新型コロナ感染症の特徴として、息苦しさを感じる脳の部分が麻痺していることがあり、急激な呼吸不全をきたしても患者本人が気づかないことがあります。8月13日になって厚労省は医療機関に対して、「PCR検査を行った医療機関が積極的に健康観察を行うようこと」という通達を出しました。
新型コロナウイルスの病期は以下のとおりです。
①ウイルス感染期→症状は熱、頭痛、咽頭痛、咳などで1週間前後で改善。8?9割の人はここで治ります。治療は解熱剤、漢方薬(麻黄湯、葛根湯)、ハイリスク患者には抗ウイルス薬(レムデシビル、抗体カクテル)を点滴します(総合病院の外来に限る)。
②免疫介在性炎症期→発症7?10日後より呼吸困難が急速に進行し、入院が必要です。治療は酸素療法に加えて、ステロイド、抗炎症薬(バリシチニブ)の点滴を行います。
③後遺症期→慢性的な倦怠感、疼痛、嗅覚・味覚異常が数ヶ月以上続くことがあります。治療は確立したものはありませんが、漢方薬(補中益気湯、八味丸など)、抗うつ薬などが使用されます。
ここからは私見です。
政府や分科会は、今だにPCR検査や抗原検査を積極的に行うようにと発信しています。しかし、新型コロナもここまで流行してくると全数把握の意味は薄れていると思います。インフルエンザと異なり診断がついても治療薬はなく、特に11歳以下の小児・乳幼児はワクチンすら打てないので、完全な制圧を目指すことに無理があります。
若くて元気な人が発熱や濃厚接触したときに、すぐにPCR検査を受ける必要はないと思います。診断がついても治療法はありませんし、若者はすぐに治ります。保健所業務も手一杯です。濃厚接触者であってもPCRは行わず、感染対策をしっかりして行動を最小限にすればいいのではないでしょうか。もちろん基礎疾患のある人や高齢者はこの限りではありません。
今度はμ株なんぞが話題になっていますが、そろそろ個々人が冷静な行動をとる時期だと思います。 以上です。
*1 厚生労働省サイト
*2 令和2年2月28日 日本環境感染学会提言
*3 令和3年8月17日 東京都福祉保健局感染症対策部長
*4 令和3年6月 25 日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部
*5 新型コロナウイルス感染症の療養者の状況(厚労省サイト)
新型コロナはデルタ株による第5波が猛威を振るい、ワイドショーでは自宅療養者の症状が急に悪化しても、入院できないという差し迫った映像を流しています。中には乳児が新型コロナに感染し、人工呼吸を受けているシーンも放映されています。
そろそろ皆さんの周りにも、新型コロナに感染した人が散見されるのではないでしょうか。明日は我が身かもしれません。或いは家族がかかるかもしれません。
今日のテーマは「新型コロナにかかったらどうする?どうなる?」です。
もし家族が感染したら、自身は濃厚接触者です。家族が治癒(発症後10日間)してから、更に14日間の経過観察が必要です。家族が治るまで10日間、それから更に14日間、計24日の自宅待機が保健所から指示されるそうです。これは今でも厚労省のサイト*1に示されていますが、その根拠は昨年2月の日本環境感染学会の提言*2です。
しかし、これではエッセンシャルワーカーの仕事が成り立ちませんので、今年の8月になって「医療従事者に限っては濃厚接触者でもすぐに勤務できる」という文書が厚労省から示されました。
濃厚接触者の定義は、①患者と同居、車内や飛行機で長時間接触、②マスクなしで患者と15分以上1?2mで接触があった場合、などですが、保健所が総合的に判断して決定します*3。
もし職場で新型コロナ感染者が出たらどうなるでしょう。最近はリモートワーク中心になっていますので、そのような場合は問題ないと思います。もしオフィス出勤者が発症するとどうでしょうか。1年ぐらい前は、当ビルのオフィスでも感染者が出て、保健所の指示で濃厚接触者のPCR検査が行われました。
最近では、「初動対応における接触者」への検査*4が重要視されています。すなわち社内で感染者が発生した時、保健所の指示を待たずに、患者との接触が考えられる者に、抗原検査やPCR検査を積極的に行うことが求められています。
もし自分自身がコロナにかかったらどうなるのでしょう。病院でコロナと診断されると24?48時間以内に居住地の保健所から電話連絡があります。感染経路などについての質問の後、健康観察が行われ、軽症(酸素飽和度96%以上または基礎疾患のない人)であれば、宿泊療養を勧められます。ホテル宿泊を希望しない人は自宅療養になります。中等症(酸素飽和度95%以下で基礎疾患のある人)は、入院の指示があります。
現在、都内のコロナ病床6000床のうち4200床が入院中で、入院基準が厳しくなっています。軽症者は原則ホテルでの健康観察を勧められますが、9月1日時点でのホテル療養者は2180人(3370受入可能)、自宅療養は約20000人で、ほどんどの人が自宅療養を希望しています。入院調整中は6800人です*5。狭い部屋に閉じ込められて、好きなものを食べられない環境は、適切な療養環境とはいえませんから当然の結果だと思います。
自宅療養中は毎日一度保健所から健康観察の電話が入ります。パルスオキシメーターの貸与と1週間分の食料(カップ麺、レトルト食品)が届きます(発症から4?5日かかる)。一人暮らしの人は、デリバリーで食料を買うか、近所で必要最低限の買い物をします。発症後10日かつ解熱後72時間経過した時点で治癒と判断され、療養は終了です。
新型コロナ感染症の特徴として、息苦しさを感じる脳の部分が麻痺していることがあり、急激な呼吸不全をきたしても患者本人が気づかないことがあります。8月13日になって厚労省は医療機関に対して、「PCR検査を行った医療機関が積極的に健康観察を行うようこと」という通達を出しました。
新型コロナウイルスの病期は以下のとおりです。
①ウイルス感染期→症状は熱、頭痛、咽頭痛、咳などで1週間前後で改善。8?9割の人はここで治ります。治療は解熱剤、漢方薬(麻黄湯、葛根湯)、ハイリスク患者には抗ウイルス薬(レムデシビル、抗体カクテル)を点滴します(総合病院の外来に限る)。
②免疫介在性炎症期→発症7?10日後より呼吸困難が急速に進行し、入院が必要です。治療は酸素療法に加えて、ステロイド、抗炎症薬(バリシチニブ)の点滴を行います。
③後遺症期→慢性的な倦怠感、疼痛、嗅覚・味覚異常が数ヶ月以上続くことがあります。治療は確立したものはありませんが、漢方薬(補中益気湯、八味丸など)、抗うつ薬などが使用されます。
ここからは私見です。
政府や分科会は、今だにPCR検査や抗原検査を積極的に行うようにと発信しています。しかし、新型コロナもここまで流行してくると全数把握の意味は薄れていると思います。インフルエンザと異なり診断がついても治療薬はなく、特に11歳以下の小児・乳幼児はワクチンすら打てないので、完全な制圧を目指すことに無理があります。
若くて元気な人が発熱や濃厚接触したときに、すぐにPCR検査を受ける必要はないと思います。診断がついても治療法はありませんし、若者はすぐに治ります。保健所業務も手一杯です。濃厚接触者であってもPCRは行わず、感染対策をしっかりして行動を最小限にすればいいのではないでしょうか。もちろん基礎疾患のある人や高齢者はこの限りではありません。
今度はμ株なんぞが話題になっていますが、そろそろ個々人が冷静な行動をとる時期だと思います。 以上です。
*1 厚生労働省サイト
*2 令和2年2月28日 日本環境感染学会提言
*3 令和3年8月17日 東京都福祉保健局感染症対策部長
*4 令和3年6月 25 日 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部
*5 新型コロナウイルス感染症の療養者の状況(厚労省サイト)
その28 今年の夏の体調管理ー夏風邪もひけない
連日金メダルに湧く報道と新型コロナ感染者の増加を警告する報道が交錯するという、お祭りと葬式に同時に参加しているような複雑な心境の毎日です。都内の新型コロナPCR陽性者は4000人を超え、私達の周囲にもPCR陽性の人がちらほら現れるようになりました。
7月30日の菅首相会見によれば、「高齢者の76%が2回接種を終えている。今後は若年者への接種加速化が急務」とのことです。高齢者より若年者の感染例が目立つようになってきました。
果たしてワクチンの効果が出ているから、65歳以上の感染者が少なくなっているのでしょうか。ウイルス変異によって高齢者にかかりやすかった新型コロナが、若年者にかかりやすくなっていると考えるのが自然ではないでしょうか。つまり、新型コロナから旧型コロナ(普通の風邪)に移行しているのです。
これまでは、身近で新型コロナにかかる人はいませんでしたが、これからは職場内でも夏風邪様の症状をきたし、新型コロナと診断される方が出てくると思います。本来コロナウイルスは冬の風邪の起因ウイルスですが、夏には高温多湿を好むウイルスが風邪を流行らせます。
今回皆さんにお伝えしたいことは、夏風邪を防ぐ方法です。夏風邪はエンテロウイルス(腸)、アデノウイルス(喉)によって発症し、胃腸炎や咽頭炎の症状が中心となります。その他、ヘルペスウイルス(帯状疱疹)、コクサッキーウイルス(手足口病)も流行します。
夏風邪をきたす環境要因である1)熱疲労による免疫力低下、2)クーラーによる冷えと乾燥、に焦点を当てその対策をまとめました。
1)夏は日の出が5時前(今日の日の出は4時54分)で、早朝に目が覚めることが多く、睡眠時間が短くなるので、早寝早起きが基本です。外が暑く、家に閉じこもりがちになリますので、室内でストレッチなどをして血の巡りをよくすることが大切です。
2)クーラーをつけて寝ることが多く、寝冷えや粘膜の乾燥の原因となります。クーラーの設定温度を高めにするか、ドライモードにするといいでしょう。また、腹巻きをしたり長袖の寝巻きを着て体の冷えを防ぎます。Tシャツ短パンはお勧めしません。
疲れを取るための睡眠が、風邪のきっかけになることに注意が必要です。
万が一、この時期に微熱や喉の痛みなど風邪症状が出たら、無理をしないで仕事を休みましょう。喉の風邪には暖かい水分を取り、ぺラック(トラネキサム酸)や葛根湯を飲んでよく寝ること。お腹の症状には葛根湯の代わりに柴苓湯です。熱があればロキソニン、イブ、タイレノールやノーシンホワイトを飲んでもいいです。いずれも薬局に売っていますので、常備しておきましょう。
新型コロナが変異を繰り返して、一般の風邪症状に近づいています。昨日菅総理の会見で、自宅療養者を診療所の医師が往診するよう要請があり、そろそろ指定感染症から外れることが予想されます。少しぐらいの熱で、すぐにPCR検査を行う意義も少なくなっています。風邪かなと思ったら会社を休み、2-3日は上記の方法で様子をみてください。
以上です。
7月30日の菅首相会見によれば、「高齢者の76%が2回接種を終えている。今後は若年者への接種加速化が急務」とのことです。高齢者より若年者の感染例が目立つようになってきました。
果たしてワクチンの効果が出ているから、65歳以上の感染者が少なくなっているのでしょうか。ウイルス変異によって高齢者にかかりやすかった新型コロナが、若年者にかかりやすくなっていると考えるのが自然ではないでしょうか。つまり、新型コロナから旧型コロナ(普通の風邪)に移行しているのです。
これまでは、身近で新型コロナにかかる人はいませんでしたが、これからは職場内でも夏風邪様の症状をきたし、新型コロナと診断される方が出てくると思います。本来コロナウイルスは冬の風邪の起因ウイルスですが、夏には高温多湿を好むウイルスが風邪を流行らせます。
今回皆さんにお伝えしたいことは、夏風邪を防ぐ方法です。夏風邪はエンテロウイルス(腸)、アデノウイルス(喉)によって発症し、胃腸炎や咽頭炎の症状が中心となります。その他、ヘルペスウイルス(帯状疱疹)、コクサッキーウイルス(手足口病)も流行します。
夏風邪をきたす環境要因である1)熱疲労による免疫力低下、2)クーラーによる冷えと乾燥、に焦点を当てその対策をまとめました。
1)夏は日の出が5時前(今日の日の出は4時54分)で、早朝に目が覚めることが多く、睡眠時間が短くなるので、早寝早起きが基本です。外が暑く、家に閉じこもりがちになリますので、室内でストレッチなどをして血の巡りをよくすることが大切です。
2)クーラーをつけて寝ることが多く、寝冷えや粘膜の乾燥の原因となります。クーラーの設定温度を高めにするか、ドライモードにするといいでしょう。また、腹巻きをしたり長袖の寝巻きを着て体の冷えを防ぎます。Tシャツ短パンはお勧めしません。
疲れを取るための睡眠が、風邪のきっかけになることに注意が必要です。
万が一、この時期に微熱や喉の痛みなど風邪症状が出たら、無理をしないで仕事を休みましょう。喉の風邪には暖かい水分を取り、ぺラック(トラネキサム酸)や葛根湯を飲んでよく寝ること。お腹の症状には葛根湯の代わりに柴苓湯です。熱があればロキソニン、イブ、タイレノールやノーシンホワイトを飲んでもいいです。いずれも薬局に売っていますので、常備しておきましょう。
新型コロナが変異を繰り返して、一般の風邪症状に近づいています。昨日菅総理の会見で、自宅療養者を診療所の医師が往診するよう要請があり、そろそろ指定感染症から外れることが予想されます。少しぐらいの熱で、すぐにPCR検査を行う意義も少なくなっています。風邪かなと思ったら会社を休み、2-3日は上記の方法で様子をみてください。
以上です。
その27 「聞く(hear)」ことと「聴く(listen) 」こと
いよいよワクチン接種も佳境に入り、今月末にはオリパラが開催されます。各国から選手団が入国し、その笑顔を見るとコロナ禍の暗い気持ちが少しは晴れるような気がします。大リーグの大谷選手も大活躍していて、私達の気持ちを元気づけてくれています。
一方でコロナ禍によってうつ病やうつ状態の人の割合が増加していることが報告されています。経済協力開発機構(OECD)による日本のうつ状態の人の割合は、2013年調査で7.9%が2020年には17.2%と倍増しています。
昨年出版された「スマホ脳(アンデシュ・ハンセン スェーデンの精神科医)」によると、人間のメンタルヘルスを良好に保つ上で、「睡眠」「運動」「人とのつながり」が重要であると述べています。
コロナの影響で人との関係が希薄になっていますが、気分がすぐれない時は信頼している人に電話してみるのもお勧めです。今日のテーマは「聞く(hear)」と「聴く(listen)」です。
『類語国語辞典』(角川書店)によると「聞く」は、音や声を耳に感じ認める意、「 聴く」は、聞こえるものの内容を理解しようと思って進んできく意である、と記されています。困っている人や悩んでいる人が相談に来たときに、あなたはその人の話を「聴く」ことができるでしょうか。ただ「聞く」だけになってないでしょうか。
人の相談を受けた時に「それはこうしたら良い」「私の時はこうだった」「それは当然だ」などと相手の話を遮ってしまうと、相談者は「この人に話しても無駄だな」と感じて話を引っ込めてしまします。
「聴く」ためには、話の内容をストーリーとして理解することが大切です。なぜそうしたのか、その時どう思ったか、他の方法はなかったか、などといろいろ質問して、相談者の言いたいことを次々と引き出します。話の内容を否定せず、こちらの意見を押し付けず、うなずくようにしてストーリーをまとめ上げていくのです。
よく話を聴いた後に、「それは大変だったね」「困ったね」と共感し「個人的異見だけど」「こう考えてみたらどうだろう」などと自分の意見を伝えることも有効です。多くの悩みは人に話すことで問題点を再構成できるので、自然に解決策が浮かんできたり、気持ちが前向きになったりします。
私も日頃の診察で、上記のことを心がけています。患者さんから「これは別件なんですけど」とか「もう一つ伺ってもいいですか」などと言われた時は、至福の喜び(大げさか)を感じます。医師は、患者さんからの情報が多ければ多いほど正確な診断ができますので。「別件」の質問が重要な意味を持つことは、よくあります。
最後になりますが、人が相談したくなるような雰囲気(表情、優しい視線、穏やかな声、ゆったりとした動き)が普段から醸し出されていることがとても大切です。日々の忙しい業務の中、そのような雰囲気を保つことは難しいと思いますが、ぜひ心がけてみましょう。
以上です。
一方でコロナ禍によってうつ病やうつ状態の人の割合が増加していることが報告されています。経済協力開発機構(OECD)による日本のうつ状態の人の割合は、2013年調査で7.9%が2020年には17.2%と倍増しています。
昨年出版された「スマホ脳(アンデシュ・ハンセン スェーデンの精神科医)」によると、人間のメンタルヘルスを良好に保つ上で、「睡眠」「運動」「人とのつながり」が重要であると述べています。
コロナの影響で人との関係が希薄になっていますが、気分がすぐれない時は信頼している人に電話してみるのもお勧めです。今日のテーマは「聞く(hear)」と「聴く(listen)」です。
『類語国語辞典』(角川書店)によると「聞く」は、音や声を耳に感じ認める意、「 聴く」は、聞こえるものの内容を理解しようと思って進んできく意である、と記されています。困っている人や悩んでいる人が相談に来たときに、あなたはその人の話を「聴く」ことができるでしょうか。ただ「聞く」だけになってないでしょうか。
人の相談を受けた時に「それはこうしたら良い」「私の時はこうだった」「それは当然だ」などと相手の話を遮ってしまうと、相談者は「この人に話しても無駄だな」と感じて話を引っ込めてしまします。
「聴く」ためには、話の内容をストーリーとして理解することが大切です。なぜそうしたのか、その時どう思ったか、他の方法はなかったか、などといろいろ質問して、相談者の言いたいことを次々と引き出します。話の内容を否定せず、こちらの意見を押し付けず、うなずくようにしてストーリーをまとめ上げていくのです。
よく話を聴いた後に、「それは大変だったね」「困ったね」と共感し「個人的異見だけど」「こう考えてみたらどうだろう」などと自分の意見を伝えることも有効です。多くの悩みは人に話すことで問題点を再構成できるので、自然に解決策が浮かんできたり、気持ちが前向きになったりします。
私も日頃の診察で、上記のことを心がけています。患者さんから「これは別件なんですけど」とか「もう一つ伺ってもいいですか」などと言われた時は、至福の喜び(大げさか)を感じます。医師は、患者さんからの情報が多ければ多いほど正確な診断ができますので。「別件」の質問が重要な意味を持つことは、よくあります。
最後になりますが、人が相談したくなるような雰囲気(表情、優しい視線、穏やかな声、ゆったりとした動き)が普段から醸し出されていることがとても大切です。日々の忙しい業務の中、そのような雰囲気を保つことは難しいと思いますが、ぜひ心がけてみましょう。
以上です。