その57 いやな気分よ、さようなら
今年は新年早々、大地震や大事故が発生し、心中穏やかではないお正月を迎えました。こうした時期には気分が鬱々とし、頭がモヤモヤしてやる気がなくなることがあります。専門用語では反応性抑うつと言います。職場環境に心が反応してメンタル不調に陥る「適応障害」とも呼ばれます。それでは、環境に反応せずにいやな気分にならない方法はあるのでしょうか。

今日のテーマは「いやな気分よ、さようなら」です。いやな気分を払拭する基本原則は行動することです。静止しているといやな気分がどんどん増幅してきます。人間はそれまでの生活環境によって培われた固有の考え方があり、これを「自動思考」と言います。例えば、試験で悪い点数を取った時に「もうダメだ」と考え、勉強を放り出す人もいるし、「よーし、次こそは」と考え勉強時間を増やす人もいます。一般的に前者の行動は誤りであり、後者は正しい行動です。

下の図のように、ある刺激を受けると瞬間的に頭に浮かぶ思考が「自動思考」です。「自動思考」は「気分」と同義です。



その人の行動はその人に備わった自動思考に規定されるのです。ポジティブな自動思考であれば問題ありませんが、ネガティブな自動思考を持った人は、ある刺激を受けると気分が落ち込み、正しくない行動をとる傾向があります。ネガティブな自動思考をポジティブに変えるには、どうしたらいいでしょうか。長年かけて培われた自動思考を変えることは難しいので、行動を変えてみることが重要です。つまり、気が乗らなくても無理に正しい行動をしてみるのです。

先ほどの例では、試験に失敗して「もうだめだ」と思っても、気分を無視して勉強することです。キーワードは「いやいややる」「気分を無視して行動する」です。行動していると自然といやな気分がスーッとなくなってきます。

また対人関係でも、苦手な人と接する時は、いやだなという気分を無視して、初対面の人のように礼儀正しく振る舞っていると、いやな気分がなくなります。これらの方法は「認知行動療法」の一部であり、反応性うつ状態(適応障害)の治療に用いられます。反応性うつ状態は狭義のうつ病と異なり、薬物療法に反応しにくいので、このような行動変容(行動を前向きにすること)が大切になります。一方、狭義のうつ病は自動思考がポジディブな人に、特に誘因なく発症することが多く、抗うつ薬がよく効きます。

お正月明けは体が鈍っているせいか、物事に取り掛かるのが億劫になりがちです。その億劫さを無視して、先延ばししていたことに手をつけてみましょう。

以上です。

参考文献
デビット バーンズ 「いやな気分よ、さようなら」1997年 星和書店
2024.01.22 11:47 | pmlink.png 固定リンク | folder.png 健康一口メモ

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